「ジン」の歴史について|クラフトジンを銀座で飲むならBARWHITEOAK

ジンは、蒸留されたニュートラルスピリッツに植物由来のボタニカルを加えて作られる蒸留酒です。そのボタニカルは、植物や果実、種子、根、樹皮、花、葉、草など多岐にわたり、その風味や香りがジンの特徴を決定します。ボタニカルを選ぶことやその品質、配合レシピ、アルコール濃度、抽出時間、蒸留時間、蒸留温度などの要素が、ジンのスタイルや性格を形作ります。

ジンの製法や特性には地域や国による違いがあり、EUではジンはジュニパーベリーの香りを主とし、アルコール度数が37.5%以上であることが求められます。また、ジンは樽熟成を行わないことが一般的ですが、最近では樽熟成を施した商品も見られます。

日本のジンでは、地域の特産品や伝統的な素材が多く使用され、近年では新しいボタニカルの組み合わせや製法の工夫が行われています。ジンの魅力はその多様性にあり、ボタニカルの選択や調和によって異なる風味や香りを楽しむことができます。

ジンの歴史とジュニパーの歴史は、爽やかな香りとキレのある味で多くの人々を魅了しています。ジンはカクテルのベースとしても人気が高く、広く知られた酒として人々に親しまれています。しかし、ジンが最初から人々に受け入れられたわけではありませんでした。多くの試練を経て、世界中で人気を確立してきました。さらに、その製法や味も時代とともに変化してきました。

ジンの起源は、医療目的で使用されていたジュニパーベリー入りの飲料にあります。ジュニパーは北半球の比較的寒冷な地域に自生する低木で、その実によってジンの独特の風味が生まれます。ジュニパーは建材としても使われてきましたが、古くから医薬品としての効能も知られていました。北アメリカの先住民族は、ジュニパーを様々な病気や外傷の治療に使用し、中国では下腹部の不快感を和らげる漢方薬として利用されていました。また、ヨーロッパではジンが腸チフスやコレラ、ペストなどの細菌感染症の治療薬として用いられていました。中世には、ジュニパーを砕いて軟膏とし、切り傷などの外傷の治療にも活用されたと言われています。

12世紀に入ると、ヨーロッパではジュニパーベリーの成分を抽出するために水蒸気蒸留法が広く使用されるようになりました。蒸留とは、物質の沸点の違いを利用して、混合物から純粋な成分を取り出す方法です。現代でも、ジンを含む蒸留酒は、原料を発酵させた後にアルコール分などを蒸留するプロセスで作られています。蒸留という技術自体は古代ギリシャの哲学者アリストテレスによって紀元前340年頃に触れられています。

しかし、ヨーロッパで蒸留酒が製造されるまでには時間がかかりました。魔女狩りや戦争の影響で科学技術の進歩が妨げられたためです。それでも、中世の混乱が収束すると、イスラム文化圏での蒸留技術がヨーロッパに伝わりました。蒸留の技術は、"蒸留の父"として知られる錬金術師イブン・ハイヤーンの活躍もあり、当時はヨーロッパよりも中東の方が進んでいました。ヨーロッパの大学ではアラビア語の書籍が翻訳され、蒸留技術が学ばれました。12世紀に編纂されたプラテアリウスのハーブ療法に関する書籍には、ジュニパーベリーを潰してブドウ酒と混ぜ、強壮剤を蒸留する方法が記されています。

ヨーロッパで蒸留酒の歴史が始まるのは、12世紀頃にイスラム文化圏から蒸留の技術が伝わった時期です。この時期を考えると、ブドウを発酵させて造るワインが6000年以上の歴史を持つことを考えると、蒸留酒は比較的新しいものと言えます。さらに、蒸留酒が最初に売り出された際は、嗜好品としてではなく薬として扱われていました。

当時の蒸留酒は「aqua vitae（生命の水）」と呼ばれ、医師によってその効能が認められていました。13世紀にフランスで活躍し、医学化学の先駆者として知られるアルナルドゥス・デビラノバは、蒸留酒の医学的な効果を「寿命を延ばし、不機嫌を追い払い、心臓を強くし、若さを保たせる」と賞賛しました。蒸留の技術は修道士や新たに設立された大学を通じて広まり、地域によっては大麦、ブドウ、ライ麦などを原料に蒸留酒が製造されるようになっていきました。これらの蒸留酒は後にウィスキーやブランデー、ウォッカなどの原型となりました。

14世紀までに、アントワープでの研究により、ジュニパーベリー入りのブドウ酒や蒸留酒が医学的に価値のある飲料として認知され、医師たちによって使用されるようになりました。これらの飲料は、様々な病気や症状の治療に役立つとされ、医学書にはその効果や服用方法が詳細に記されています。ジュニパーベリー水として蒸留された飲料は、消化器疾患や風邪、傷などの治療に使用され、医薬品として扱われました。

一方で、娯楽目的での飲用も存在し、錬金術師のヨハン・ファンアルターが1351年にアルコールの快楽的な効果について記述しています。蒸留酒の製法が洗練されていなかった時代でも、ボタニカルを用いた蒸留酒は風味を向上させ、医療目的と娯楽目的の両方で重宝される原料となりました。