一般的なタバコ(シガレット)とシガー(葉巻)には、使用されるタバコ葉の種類、製造方法、吸い方、楽しみ方など、さまざまな点で大きな違いがあります。
まず、使用されるタバコ葉の点で、シガレットは主にブレンドされた細かいタバコ葉を使用し、燃焼を助けるための添加物が加えられていることが多いです。一方で、シガーは天然のタバコ葉のみを使用し、葉巻一本がラッパー(巻き葉)、バインダー(つなぎ葉)、フィラー(中の詰め葉)という三層構造で作られています。特にプレミアムシガーではすべて手巻きで、葉も熟成・発酵の工程を経て仕上げられるため、より豊かな風味が楽しめます。
次に、吸い方の違いも重要なポイントです。シガレットは肺に煙を吸い込むことを前提として設計されていますが、シガーは煙を肺に入れず、口腔内で香りと味わいを楽しむことが基本です。このため、シガーの吸煙は「喫煙」というよりも「テイスティング」に近い行為であり、ワインやウイスキーのように香りの複雑さや余韻を味わう文化があります。
また、喫煙時間やシーンにも違いがあります。シガレットは短時間で済ませることができ、日常的・習慣的な喫煙スタイルに向いています。対してシガーは、種類によっては30分から1時間以上を要することもあり、ゆっくりとした時間の中で楽しむ嗜好品としての位置づけが強いです。喫煙というよりも、リラクゼーションや自己表現、社交の一環として嗜まれる傾向があります。
さらに、健康への影響についても注意が必要です。いずれもニコチンを含み健康リスクがあることには変わりませんが、シガレットのほうが吸引回数や摂取頻度が多く、依存性やリスクが高まる傾向があります。一方、シガーは肺に煙を入れないことが多く、頻度も比較的少ないため、習慣性や健康への影響は異なります。ただし、これはあくまで一般論であり、どちらも節度ある嗜み方が求められます。
まとめると、シガーは「タバコの一種」ではあるものの、工芸的な製法と繊細な香味の世界が特徴の、まったく異なる文化と嗜好の対象であると言えるでしょう。シガレットが日常的な「ニコチン摂取手段」であるのに対し、シガーは特別な時間を演出するための「嗜好品」としての側面が強いのです。